明日書く書くで書かないで終わりそうなので週1でも月1でもちょろっとづつ書き貯めるかな~ということで序章だけ。
- 艦長ども -
この世界にはPODパイロットと言われているエリートがいる。
先端技術の粋を集めたスペースシップを操り各国からの依頼を受け、時に国家機密にかかわる仕事もこなす。
与えられる報酬は天文学的な金額に登り、先物の仕手にPODパイロットの名前が上がることで壮大な戦いが始まることもある。
だが、一番重要なことは名前につくPODの文字が表わしている。
クローン技術の発達とともに人類は擬似的な不死を手に入れた。
PODパイロットは、不意の事故によりPODが破壊された際に瞬時に別の場所に用意されたクローン体に移り変わることができる。
艦長は艦と共に生き共に死ぬなんていうのはもうはるか昔のこととなった。
広大な宇宙で艦が沈み迷子になるなんてことはもう無い。
「で、これからどうするよ」
広大な宇宙で迷子になることはもう無い…のはそう、PODパイロットだけの話しだ。
「どうするよもクソも、あいつ回収に来てくれるかな」
「時間はいくらでもあるからな、回収に来てくれるか賭けでもするか」
脱出艇の中では沈痛な雰囲気と気楽な雰囲気が混ざった混沌とした状況になっている。
沈んだ顔をしているのは新米で気楽なのはベテランだと思ってくれて構わない。
「いつも思うんだけどな、回収してくれない方に賭けた場合は皆助からんのだから勝ち分受け取る意味あるのか?」
「生命保険のようなもんだ、遺族が受け取れば多少は生活の足しになるってもんだろ」
「俺は独り身だよ」
こんな会話ができるのもベテランの余裕か。
「お前も落ち込んでないでそろそろ開き直ったらどうだ。別に初めてってわけじゃないだろ?」
肩を叩かれたそいつは少し青ざめた顔を億劫そうに持ち上げた。
「開き直るとかそういう問題じゃないんだよ、脱出艇と相性が悪いのか・・・酔うんだ」
「酔うってお前、波もない宇宙でどうやって酔うんだ?」
「俺が知るかよ」
周りに集まった連中がやれやれといった雰囲気で肩をすくめる。
「辺境で戦闘してる連中と違ってJITA近くの輸送だし、少しでも商品が残ってないか確認しに来るだろう」
「商品が何も残ってないことを確認だけして帰るってこともあるだろ」
「あいつはランクAだからまずそれは無いな」
「それにしてもあんなチンケなIDSを神風したっていくらにもならんだろうに、よくやるわ」
「あいつらはそれが仕事だからな」
「なんとも殺伐とした職場だ」
PODパイロットがいくらエリートといっても巨大なスペースシップを1人で動かすことはできない。
かといってスペースシップ1隻に複数のPODパイロットが乗り込むことも無いとなれば必然的にPODパイロットではない船員が必要になる。
それが彼らだ。
艦と共に生き共に死ぬ。
彼らは自分たちのことを誇りと皮肉を込めてこう呼ぶ。
「艦長ども」
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